ひなた

今日も猫は私より先に起きていた。
カーテンを開けた窓の下で丸くなり、ぱたり、ぱたりとしっぽをゆらしている。
朝食を持って来た私に気が付くと、鳴き声を出すはずの口から青年の声が出てきた。
「おはよう」
「おはよう」
それだけ。
私は椅子に座り、朝食を食べはじめる。
彼もカリカリとキャットフードを食べた。
私が髪を整えるころになると、彼は新聞を取って来てくれる。
「今日は午後から雨」
かさを持っていこう。



スーパーに寄って帰ると、彼はテレビを見ていた。
国営放送のクラシック番組。
曲にあわせて、彼の体がクッションの上でゆれている。
夕食はそれを聞きながら食べた。
カタカタとパソコンを使っていると、すぐに日付は次の日。
目を押さえながら顔を上げると、彼は先に寝たようだった。
わずかなふくらみを潰さぬようにして、ベットに入る。
目を閉じれば、小さな呼吸音が聞こえた。



目を開くと彼が横にいた。
前に写真で見た茶色い髪、細身の体。
彼は穏やかな表情で眠っている。
私も彼の横で再び目を閉じた。