■ シュトライン 5

ハウエルは苛々していることを隠しもせずに、椅子に腰掛けていた。
あの夜から女性への態度が軟化したと言われ、その直後に友人に言われた言葉に、ハウエルはすんなり彼女への気持ちを認めた。一目惚れに近かったとは言え、そんな事もありえるだろうと納得した。その直後に言われた、思い人との結婚。
「喜ぶだけではいけないのだが」
此処の危険性を理解しながらも、彼女が妻になる事を考えれば嬉しさは隠せそうにない。二人分の紅茶を手ずから入れ、その際に毒が無い事を確認する。
「コナー」
「は」
呼べば影から人が現れる。
「奴は?」
「今日中には取り押さえられるかと」
「そうか。次はこれだ」
「は」
コナーは受け取ると、目を通して直ぐに処分する。
「いつもすまない」
「滅相もございません。では、また夜に」
「ああ」


「ハウエル!」
突然扉を開けて入って来た人物に、ハウエルは暫くして名を呼んだ。
「……ルディか」
「なんだい。期待した人物でもいたのか?」
ペンを置いて、ハウエルが答える。
「いや、むしろ来ないでほしい人物がいてな」
「君のお母様とか?」
「よくわかるな」
「まあね、私の母もそうだから。姉妹揃ってとは恐ろしいね」
つまりハウエルとルディは従兄弟同士だった。
「…で、面白い事してるって?」
「早いな。他は?」
「多分気付いてないよ。まあ、気付いてももう遅いしね」
遅かれ早かれ、当主になるのはこの男だとルディは思っている。 「単なる掃除だ」
「……君の姫君のため?」
ハウエルは答えなかった。
それを肯定とルディは認識した。